JEDIS設立20周年を迎えて

■執筆者 事務局長 酒井 基喜

■執筆日 2017年 10月 2日

 JEDISが設立20周年を数える今年、私は還暦を迎えました。
思えば人生の3分の1をJEDISと共に歩んで来たことになります。
 そして還暦を迎えた今、私はすこぶる運がよく、幸せだったな~と思います。それはJEDISへ参加する前の私と、今の私とでは、イベントに関する情報源となる人脈、その情報の質と量、そして何よりも、自分自身のイベント従事者としての職能が20年前と今ではまるでケタ違いであることに気付かされるからです。まぁ、「歳をとっただけ」ではあるのですが、JEDISとの出会いは確実に私を変えてくれました。

 まず、そもそもJEDISと出会うきっかけとなるイベント業務管理士という資格制度との出会いは、バブル期全盛のちょっと前から展示会の施工業者として展示会場という狭い空間の中で面白おかしく会場づくりに夢中になっていれば何の心配も無かった蜜月が終わり、狭い展示会業界の中も流石にざわつき出して熾烈な生き残りのための過当競争が繰り広げられていた最中の1994年度、イベント業務管理者という旧通商産業大臣認定の資格制度がスタートしました。

 イベントという概念すら一般的には馴染みが薄いその時代にいきなり通産大臣認定資格で、正直「何だろう!」っていうのが当時の私の正直な印象でした。しかし、大臣認定なら国家資格だろう、っていうことでイベントに関係があるだろう人々が「これを持っていないと仕事が出来なくなるのではないか?」と危機感を募らせ初年度は約3.000名が受験し、2~3年ほどで資格登録をした人は約2.000名を超える程にもなりました。

 しかし、蓋を開けてみればそんな危機感は杞憂で、すぐさま資格保持者から「一体この資格を持っていてどんなメリットがあるんだろう?」っていう疑念が生まれ、その同じ疑念を抱いた主に博覧会制作に携わっていた業界の有識者によって組織された最初の団体が日本イベント業務管理者の会(Japan Event Director’s Society)でした。

 その後、日本イベント業務管理者協会と名称を変え、更に後年、資格の名称がイベント業務管理士に変わり、それを反映して現在の名称の日本イベント業務管理士協会となり、その間にこの資格制度の通産大臣認定も取れて、一般社団法人 日本イベント産業振興協会(JACE)認定となっています。
 さて、その活動目的は設立当初から今に至るまで以下のとおりです。 

 当協会はイベント従事者の職能を認定する日本で唯一の資格制度「イベント業務管理士」の資格保持者が自らの職能の自己研鑽とイベントの発展への貢献を目的に集う非営利団体で、イベント業務の進歩改善ならびにイベントの質の向上と健全な発展に寄与し、これらを通して資格者の社会的地位向上を図る。

 となっていますが、このとき私には上記の活動目的の意味などほとんど理解出来てはいませんでした。

 当時の過当競争の渦の中で喘いでいた私は、受注機会逸失の危機感から資格制度発足2年目に同資格を取得しましたが、すぐさまこの資格の効用について疑念を抱き悶々としました。そんな時にJEDIS設立の一報を聞き、入会すれば仕事にありつけるのでは?との安直で邪まな動機でこの組織へ即入会したのが恥ずかしながら私の入会のきっかけでした。

 入会してまずはある委員会に所属し、毎月1回開催の会議に出席して「イベントとは何ぞや?」をテーマに議論することになるのですが、ここで日本のイベントの歴史、変遷等について私には人に語れるような含蓄のある経験や情報を持ち合わせていないことを思い知らされます。

 この象徴的な例として、当時ある日の委員会の中で「この資格者は大学や専門学校でイベントについて十分講義出来るスキルを持つ者でなくてはならない。」という意見があり、当時の私はこれを聞いて内心震え上がりました。
 イベントについて1時間も2時間も人前で語ることなど当時の私には恐ろしくて到底考えられなかったからです。
 正に井の中の蛙であったことを痛感し、そこからJEDISの活動目的にある「自らの職能の自己研鑽」に邁進することを自分自身の目的にも据え、このJEDISの活動にどんどん前向きに参加するようになっていきました。 

 そうして始まった20年間でありましたが、入会当初目論んだ邪まな営業目的は正直言って劇的に効果があった訳ではありません。
 一般的に何らかの業界団体へ加入するメリットと言えばこの営業目的を挙げる方が、まずはほとんどだと思いますが、生憎JEDISのメリットはそこにはありませんでした。

 では、JEDISへ加入するメリットとは何か?ということですが、それはまず、受発注関係の枠を越えた人間関係の構築にあります。この人脈によって得られる情報は、日常業務で得られるクライアントからトップダウンで得られるほぼ一方通行であったり、どこかの部分がブラインドであったりする情報とは違い、件のイベントにおいて主催者から末端受注者までの全てを俯瞰する立場で見た立体的な情報であることが多いのです。そのように俯瞰した立場を理解することは自身のイベント業務を遂行するにあたり、何を優先しながら進めるかを見極める指針として後の業務に多いに役に立ちました。

また、JEDISは全国を8地域本部に区切って各地域本部毎に活動を展開する全国組織です。従って毎月東京で開催している運営幹事会や年に1度開催している定例総会などにおいて発表される各地域本部の活動状況報告や懇親会での世間話により全国の生のイベント事情に触れることができます。そのことにより、イベントに関して全国的な視野を持つことが出来て、各地域間交流が生まれ、相互協力の和も広がる、ということもJEDISの特徴的なメリットのひとつと言えるでしょう。

 そして最後に、最大のメリットとして挙げたいのは、イベント業務管理士資格制度を運営する一般社団法人 日本イベント産業振興協会(JACE)や、一般社団法人日本イベントプロデュース協会(JEPC)そしてイベント学会などのイベント関連団体がイベントに関連する様々なテーマで開催するセミナー受講の機会が数多く得られ、そこでインプットされる最新の情報の蓄積が知らず知らずのうちに自分の血肉となっていることです。

 JEDISに加入してから20年に及ぶこの情報の蓄積は、加入当時語るべきイベント情報を何一つ持っていなかった私を大きく成長させてくれました。

 私は現在、JACEが年2回開催しているイベント業務管理士2級とイベント検定、そして年1回開催のイベント業務管理士1級のそれぞれの試験対策セミナーの講師を務めさせていただき、受講者の合格率はどの試験も90%を超えています。
 何と気が付けば、JEDIS加入当初に抱いた「講師なんてとても出来ない!」という恐怖心をいつの間にか私は克服することが出来てしまったようで、今はとても驚いています。 

 

 さて、私はJEDIS加入10年目から事務局長を務めさせていただき、今年11年目になります。思えばこの役職を務めさせていただいたことで体験できた様々な出来事や得られた情報もイベント従事者としての職能を高めてくれた大きな要因であったと、拙い私をこの11年間我慢強くご支持いただいた理事の皆様に深く感謝いたしております。

 JEDIS会員の皆様、当協会のメリット、ご理解いただけたでしょうか?
 どうか、折角ご縁あってJEDIS会員となられたからには、このメリットによって成就するご自身の今後の5年後、10年後そして20年後の素晴らしいイベント産業人としてのビジョンを描いてご活躍されることを祈念します。 

 更にそのメリットを最大限に享受するには何よりも事務局長という役職がうってつけであることを事務局長経験者としてここで強調したいと思います。
そしてこれを経験するなら若ければ若いほどメリットも大きいし、いつまでも「アラ還」の私が事務局長を務める組織では組織丸ごと経年劣化が起きる危険性があるだろうとも思います。

 そう、だから誰かお若い方、そろそろ事務局長を替わってください。

20171002