あの時の万博―僕のスタンバイミー

■執筆者 間藤芳樹 副会長

■執筆日 2017年 12月 15日

あれは中学生だった時だ。
ある日、小さな店をやっていた父が、夕ご飯を食べながら、興奮気味に話す。
「万博の会場の、工事が急に進んでいて、竹やぶがすっかりなくなっていたぞ。
未来都市があそこにできるんだ」
びっくりした私は、次の休みに友と自転車を走らせ見に行った。
私たちの心配は、万博のことより、あの竹やぶ山がなくなったということだった。
山の中の野池で泳いだこと。秘密基地を作って、みなでエロ本を持ち寄ったこと。
なつかしいあの場所は、すっかりなくなっていた。

それから2年、私は高校1年生になっていた。
そして、その場所は見たことのない街に変わっていた。
巨大なモアイ像のような太陽の塔
ソ連館の尖った屋根
ブリテッシュコロンビア館の空をつんざくような木材の柱
月の石のある巨大なアメリカ館
まるで、未来都市に迷い込んだような不思議な体験が、私を包む

授業終わりで、クラブをさぼり、一目散に会場へ
初めて見る国の外国人
きれいなコンパニオンのお姉さん
誰ふり構わず、サイン帳にサインをしてもらう毎日
それだけで世界とつながっているように感じた

あれから、何十年
今、私は博覧会の仕事をしている

人生とは不思議な出会いでできている

自然破壊と叫ばれ、あの時、山を削り、会場になった場所は、
今は、跡地公園として、緑いっぱいな素敵な場所になっている
そして、環境保護として、開発されなかったところは、その後のバブルの無謀な開発で
今は、悲惨なことになっている
自然破壊、環境保護とは、いったいなんなのだろう
万博公園のそばを車で通るとき、いつもそのことを思う
私たち、あの時の少年は、確かに未来を見ていた

今、私たちの仕事は、誰かに未来を見せられているのだろうか?