京都で目指すイベント教育のすすめ イベントを学ぶことは、課題の発見から企画・実施運営まで人材育成に適している

■執筆者 平家 良美
■執筆日時 2018年10月2日

◆京都で目指すイベント教育のすすめ
幸いにも京都は千二百年続いてきた町である。この豊かな歴史と文化に育まれてきた芳醇な地にあってあらゆる文化文明に醸造されてきた“京都”には、これでもかと年中行事や祭、温故知新ともいうべき行催事があらゆる階層に満ち溢れている。従って、この地に住む府民、市民、さらには学生、workerがイベントを享受するのは勿論、主催者として参加するなど、日常の中にイベントと共にあるという生活観がある。そういった環境にある人々は、イベントの仕掛け、仕切りに向いているのではと思う。学生もしかりである。
歴史的にみても観光とイベントのかかわりは深く、観光産業の発展にイベントは大きな役割を果たしてきた。1895年に京都・岡崎で開催された「第4回内国勧業博覧会」をきっかけに「平安京遷都1100年祭」が開催された。100年後の1994年に「祝祭・平安建都1200年祭」が1年にわたり町中をイベント会場にして、後援イベントだけでも約3000のイベントが実施された。筆者も主催者の一人として多くのイベントを実施した。
その後も「源氏物語千年記」、「琳派400年記念祭」、「明治150年 記念事業など、京都が中心となり発信していったものが多い。たとえ全国レベルの催事であっても、“京都カラー“が濃密になったイベントが展開される。神社仏閣のライトアップも1994年の「平安建都1200年祭」以降、全国へ波及、定着していった。筆者も少なからず高台寺、清水寺、比叡山延暦寺などに関わってきた。

◆大学教育におけるイベント学
私が非常勤講師を勤める京都の美術大学におけるイベント学の可能性について日頃感じるところをまとめてみる。
イベント学はまだ未整理ではあるが、地域文化、観光文化、商業・歴史文化の中で“イベント学“が講じられている。私が担当してきたのは、学部では「イベント・プロデュース論」、大学院では「企画・プロデュース論特講」である。芸術系大学であるから、卒業後は制作者・製作者になる作家志望者が多い。また、彼らの強みは圧倒的に質の高いビジュアルやproductsをいとも簡単に創作することができることである。そこで、彼らの独り立ちをsupportするためにも講義の目標とするところに、self produce できるところに主眼をおいてきた。これを強みとして「3かけ人材の育成」(※桑田政美先生による提唱)を目途とした。そのためにイベントの課題発見から企画・実施運営までの手順を学ぶ意義があり、最適な手段であると考えているからである。

◆「3かけ人材の育成 、文章が書ける、絵が描ける、現場を駆ける」(桑田政美先生掲出)
そこで京都にあって、且つ芸術系大学の強みが活かされる。「文章が書ける」「絵が描ける」「現場を駆ける」に注力してきた。学部生にしろ、院生にしろ、美術の専門領域を学び、展示会開催などの経験がある。しかし、イベントのbasicなところを学んでいないので、先ず、そこを埋めることからstartする。本学は留学生も多く、学生レベルのばらつきがあり、講義は工夫を要した。そのために可能な限り、多くのイベントに参加することを勧めてきた。ときには筆者がプロデュースするイベントスタッフとして参加したり、能・狂言の古典文化芸術鑑賞や、パリコレ凱旋ファッションショーを鑑賞したり、商工会議所主宰の催事に参加したりしてできるだけリアルな本物に触れる実践体験を積む機会を心掛けた事例研究と講義のバランスに配慮しつつ、イベントを立体的に学ぶアプローチを心掛けている。
また、できる限り事例研究としては映像を使った。この場合も私自身がproduceしたイベントがベースである。例えば「第29回日本医学会総会 市民プログラム」や「ユミカツラ パリコレリターンコレクション”若冲を着よう”」、「松尾大社醸造文化顕彰会・醸の会」(会長尾池和夫京都大学元総長)などである。

◆心強いJEDISの仲間
さらに、何時の時もJEDISメンバーのサポートが大変有難い。メンバーの豊富な知識や経験から、諸先輩、諸氏に助けられることが多い。JEDIS元会長の平野暁臣先生から貴重な資料提供を受けたり、JACEの「イベントアワード(イベント大賞含む)」など、大いに参考にさせていただいた。間藤副会長のセミナーにも積極的に参加させていただいた。また、JEDIS関西地域本部メンバーの協力で、近年の海外事例などの貴重な資料提供を受けたりして、講義を立体的に効率よく進められた
しばしば「JEDIS入会のメリットは?」と聞かれるが、正にこの横繋がりのネットワークを如何に活かすのか、という事だと言える。これがJEDIS入会のメリットではないか。“Up to you!”

こういった京都の環境にあってイベントに接する機会が多い学生諸氏がイベントプロデュースを学ぶことが、課題の発見から企画・実施運営・報告までのプロセスを学ぶことができる。このことが、社会のニーズのある人材育成教育に役立つと考えて、大学教育や社会人教育においてイベント学を導入されることを望むものである。

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写真2017年4月9日「若冲を着よう」より
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©房野光「松尾大社」