ユニバーサルイベントという考え方 ~イベントの新しい在り方~

■執筆者 梶原貞幸
■執筆日時 2002年6月15日
 
昨年4月、ユニバーサルイベント協会が発足し、10月にはNPO(特定非営利活動法人)の認可を受けた。ここで、ユニバーサルイベントの概念について、簡単にご紹介しておきたい。
 ユニバーサルイベントとは一言でいえば「全ての人、身障者・高齢者も健常者も、誰もが豊かなイベント体験が得られる会場構成と運営体制を実現したイベント」ということである。「ユニバーサル」という言葉には「万人の」「共通の」と言った意味があり、既にユニバーサルデザインと言う考え方に基づいた施設づくり、商品づくりが急速に普及しつつある。ユニバーサルイベントは、このユニバーサルデザインの考え方をイベントに敷衍し、新しいイベントの在り方を確立しようとするものであり、その基本理念は国連人権宣言の基調となったノーマライゼイション理念(全ての人が公平に・平等に暮らせる社会がノーマル=普通・当然であるという考え方)である。
 ユニバーサルイベントはノーマライゼイションという基本理念のもとで、四つの基本概念から構成されている。第一はユニバーサル・アクセスビリティーで、誰もが安全にスムーズにアクセスできる、会場への経路と会場施設構成ということである。第二はユニバーサル・コミュニケーションで、誰もが豊かで実りある情報体験や交流ができる、分かり易く楽しいイベント・コミュニケーションの実現ということである。第三はユニバーサル・オペレーションで、誰もがその身体的条件に応じた適切でホスピタリティーに富んだ支援を受けられる運営体制ということである。第四はゼロエミッション・イベントで、地球環境に配慮し、廃棄物の排出を極力抑えた会場造作構造とプログラム内容ということである。
 ユニバーサルイベントの考え方で重要なのは、身障者・高齢者も健常者も「一緒に」「公平・平等に」に対応すると言う点で、従来の身障者を特別視した、身障者専用の対処方法であったバリアフリーの考え方から一歩前進している点にある。また、しばしば、ユニバーサルイベントは身障者や高齢者のみのメリットを重視したイベント・スタイルと誤解されるが、そうではなく、健常者にも大きなメリットをもたらすものであるということも理解しておく必要がある。容易で快適なアクセス、充実したコミュニケーション、ホスピタリティーに富んだオペレーション、そして、ゼロエミッション。これらはイベント全体のクオリティーを高める上で欠かせない要素であり、この点でユニバーサルイベントは健常者にも大きなメリットをもたらすものと言えるのである。
 マスメディア情報の氾濫に加え、インターネットに代表されるニューメディアの急速な発展など、間接的コミュニケーション・メディアの隆盛が続くなかで、人と人とが時間と空間を共有する直接的コミュニケーション・メディアであるイベントは、他のメディアに比べイベント固有の制約を多く持っているとはいえ、その存在価値を決して失うことはないであろう。今、大切なことはイベントのクオリティーをいかに高めて行くかに注力することであり、その為の方法論を持つことである。ユニバーサルイベントはその有力な方法論となりうると考えている

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* プロフィール*
1947年生まれ。
明治大学文学部演劇学科卒。協同広告(株)に入社、総合企画局企画部プランナーとしてマーケティング企画、セールスプロモーション企画の立案に従事。その後、現在の映像制作、グラフィック制作、イベント制作の3部門をもつ企画制作会社に移り、1985年のつくば万博をはじめとして各種地方博覧会のパビリオンの企画制作に従事。同時に、各種企業の展示会、コンファレンスの企画制作プロデューサーを務める。
  日本イベントプロデュース協会常務理事
  ユニバーサルイベント協会理事
 (株)エス・ピー・ピー専務取締役
 (株)アブジ代表取締役