我々はどんな記憶を残せるのか

■執筆者 JEDIS中部地域本部 中部地域本部長 原田 伸介

■執筆日 2016年7月12日

 今回、日本イベント業務管理士協会中部地域本部長として参加した伊勢志摩サミットは、民間の経済団体「中部経済連合会」が軸に、自治体「三重県・愛知県・名古屋市」と連携して、この地域が、世界にいかに働き掛けることが出来るか、世界との接触点で活躍の場が作れるかと言う事で始まった「オール東海」官民連携の取り組みであった。
つまり、国や外務省が進める国際会議G7サミットと言う場を活用して、開催後、地域に資産を残せるか、情報発信したものがどれだけ帰って来るのかを問われる訳である。

 その為には、世界から日本へ集結する5,000名を超える国内外メディアや訪日サミット関係者のゲートウェイである「中部国際空港セントレア」「JR名古屋駅」も当然ながら、一番メディアが集結する情報拠点「国際メディアセンター(IMC)」で中部地域が、日本の中でどの様な立ち位置なのかを明確に語らなければならないだろう。

 そこで「ものづくり、最先端技術の変遷」を、「300年前の木や糸の技術」と日本人の持つ「和のスピリッツ」で紹介した「からくり人形の技術展示/実演」は、大変意味が深いものになった。
 また、伊勢志摩サミットの訪日来訪者に持帰って頂いた「オリジナル記念品/森香炉」は、伊勢神宮から特別に下付して頂いた「式年遷宮の木材」や茶人千利休が客人をもてなす時に使った「クロモジの香りを染込ませた香り玉」、さらに「美濃和紙の透かしの技術」などの中部地域の古の技術が、物語りとして織り込まれており、それと共に「伊勢志摩サミットと伊勢神宮の記憶、中部地域の記憶」も刻み込む事が出来た。

 さらに、中部経済連合会が中心となり進めてきた「昇龍道」は、広域観光周遊コースとして、日本政府がこれから世界に発信していく観光アイティムであるが、世界ではまだまだ知名度は低い。
 特に関係する9県の地元の意識が、連携統合されていない事が大きな課題であろう。
 一つ一つの行政区が、それぞれにポテンシャルを持っているだけにまとまりにくいのは確かであるが、世界を見据えた場合それだけでは、打ち出しが弱すぎる。 地域連携した一体となった物を、どの様に物語に乗せて、世界へ発信出来るか、「酒、山車、祭、歴史」など切り口は、豊富だが人々が関心が持てる内容に編集する事が早急な課題ある。
 そして、そこには「本物」が座っていることがもっとも重要な要素となるであろう。
昨日今日作られた、浅い文化では、もはや情報が発達した人々は満足しないし、心には届かずその後の記憶に残る事はないだろう。

 その意味でも伊勢志摩サミットを機会に、この地域の物語を改めて磨き紡ぎ上げて発信していく必要があると思う。
 経済が、文化が、生活や社会が、進化し活性化し続け、一方で人口は減り続け貧富の格差も広がる、歪な社会と向き合いながら、持続可能な循環型の社会を形成し、地域として世界とダイレクトにつながり、さらに豊かに生きていくためには、伊勢志摩サミットを機会に、世界に先駆けてこの地域が先進モデルとなるべきであろう。

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「国際メディアセンターでのからくり人形技術展示/実演」
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「オリジナル記念品/森香炉」